スタッフ 作・演出 つかこうへい 美術 朝倉 摂 その他 不明 小説 「つかこうへい劇場1・ 熱海殺人事件」 (角川書店刊)
キャスト 風間杜夫 平田 満 加藤健一 井上加奈子(80年) 角替和枝(81年) 岡本 麗(82年)
会場 1980年春&秋 1981年春 1982年春 以上すべて紀伊國屋ホール 1980年春・大阪公演 毎日国際サロン 2000円 1982年春・京都公演 シルクホール 2500円 他、福岡など地方公演あり
◎熱海殺人事件」戯曲リスト(絶版あり) 「熱海殺人事件」(新潮社) 「定本・熱海殺人事件」(角川書店)※風間版はこの戯曲が一番近い 「水野朋子物語・熱海殺人事件」(つかこうへい戯曲・シナリオ作品集1収録 白水社) 「新・熱海殺人事件」(白水社) 「熱海殺人事件・ザ・ロンゲスト・スプリング」(白水社) 「熱海殺人事件・売春捜査官」(メディア・ファクトリー) 「熱海殺人事件・モンテカルロ・イリュージョン」(つかこうへい’98戯曲集収録 三一書房) 「熱海殺人事件・サイコパス−木村伝兵衛の自殺」(つかこうへい’98戯曲集収録 三一書房)
1974年度岸田戯曲賞受賞作。初期のつかこうへいの代表作である。 1980年春の公演から、それまで三浦洋一が演じていた木村伝兵衛部長刑事を風間がひきついだ。 80年春は地方公演からスタート。私が観たのは4/8で大阪公演の2日目。まだ初日に近い状態だったのではないだろうか。思いきり力の入った熱演という印象。 その後80年秋の紀伊國屋ホール公演、82年春の京都公演を観たが、だんだんと力が抜けていって、風間の本来持っている甘さや柔軟さが、うまく生かされた部長刑事になっていた。 どの公演も基本ラインは同じだが、細かい演出には毎回(毎日?)変化があったようだ。80年春の公演にあったTV「キイ・ハンター」のパロディは、秋の公演ではなくなっていたし、音楽も初期の「思い出の渚」からシャネルズの「トゥナイト」へと変っている。 この「トゥナイト」にのって、風間と平田の踊るドゥワップが、いつの間にかどじょうすくいに変る場面が最高に可笑しかった。私は観られなかったが、81年の公演ではラストシーンで客席を鳩が飛んだらしい。82年のカーテンコールでは、出演者全員が「思い出のクリーングラス」を歌いながら登場した。 つか復活後も、役者を替えて毎年のように上演されているが、今の「熱海」と以前の「熱海」ではまるで印象が違っている。風間の頃は「三流殺人犯を一流の犯人に育てあげる」という設定の中から、地方出身者の哀しい東京物語が浮かび上がってきたが、現在の「熱海」は犯人の物語以上に、捜査側のドラマの描写が多い。犯人の貧しさの設定もより過激になっているようだ。 塩見三省、池田成志、阿部寛、石原良純、そして女性版の鈴木聖子、由見あかりと、役者が変わるたびに全く違う「熱海殺人事件」が登場し、それはそれで楽しみなのだが、シンプルでささやかな設定の「熱海」が、時々とても懐かしくなる。 もっとも最初に紀伊國屋ホールで上演された三浦版の「熱海」も、初演の文学座版に比べるとかなり派手な演出に変わっており、それにとまどった人もいるということだから、風間版も変わり続ける「熱海」の一過程だったのかもしれない。 だいたいタキシードを着て取調べをする刑事なんて、普通じゃなかなか出てこない発想だよね。