太陽を盗んだ男 <キティ・フィルム・コーポレーション>


スタッフ
監督 長谷川和彦
脚本 レナード・シュレーダー 
    長谷川和彦
原案 レナード・シュレーダー
製作 山本又一朗
プロデューサー 伊地智 啓
撮影 鈴木達夫
美術 横尾嘉良
録音 紅谷愃一
照明 熊谷秀夫
音楽 井上堯之
音楽プロデューサー 多賀英典
編集 鈴木 晄
助監督 相米慎二
配給 東宝
1979年10月6日公開
DVD、ビデオ発売中
(アミュース・ピクチャーズ)


出演
沢田研二 菅原文太
池上季美子 北村和夫
神山 繁 佐藤 慶
風間杜夫 伊藤雄之助
水谷 豊 西田敏行
小松方正 汐路 章
森 大河 江角英明


1979年度キネマ旬報
  日本映画ベストテン第2位
映画芸術誌ベストテン第3位

 


<ストーリー>
中学の物理教師・城戸誠は、生徒たちと東海村の原発を見学した帰り、機関銃と手榴弾で武装した老人にバスを乗っ取られる。その時バスから生徒達を救い出し、自ら被弾しながら犯人を逮捕した男・山下警部補の姿は城戸に強い印象を残す。
バスジャックの一件でマスコミからヒーロー扱いをうけた城戸であったが、実は教師という仕事に何の興味もなく、やる気のない態度で生徒達の間では有名だった。
ある日城戸は、東海村の原子力発電所に忍び込み、プルトニウムを盗み出すことに成功する。警察庁は盗難の事実を否定するが、政府は騒然となっていた。
その頃、城戸は自室にビニールを張り巡らし、完全防備の宇宙飛行士スタイルで原爆作りに熱中していた。そして数日後、それは完成した。
警察庁長官室に奇妙な物体が送り届けられる。東海村襲撃犯からの贈り物だ。専門家による解体の結果、模擬原爆であることが判明。犯人は盗んだ液体プルトニウムから完全な原爆を作り出したに違いない。警察庁に緊張が走る。そしてなぜか犯人は山下警部補を連絡相手に指名した。
原爆は完成したものの城戸は何をしたらいいのか迷っていた。そして山下に伝えた要求は「テレビのナイター中継、最後まできっちり見せてよ」
原爆という強大な武器を持っているはずの犯人の、あまりにも些細な要求に山下は戸惑う。
城戸の要求通り、ナイターは最後まで中継された。第二の要求を何にするか、城戸は若者のアイドル・沢井零子=通称ゼロのDJ番組に「9番」と名乗り電話で相談する。ゼロはリスナーに呼びかけ原爆を使い何を要求するかを募集、爆発的な反響を呼んだ。
たくさんのアイデアの中から城戸は「ローリングストーンズ日本公演」を採用した。ローリングストーンズはドラッグ問題で日本政府から入国を拒否されているのだ。
刑事達がゼロのもとに押しかけ、ゼロは原爆がジョークではなかったことを知る。
放送中に何度か気になる人影を見かけた。また同じ男を見つけたゼロは、放送中にもかかわらずその男を追いかけてゆく。9番=城戸と見つめあうゼロ。城戸はゼロにキスをして消える。ゼロの指にはからみついた城戸の髪の毛。城戸は放射能に犯されていた。
城戸の次の要求は5億円。金が目的で原爆を作ったわけではなかったが、原爆を作る為に借りたサラ金業者からの取立てが厳しくなってきたからだった。
山下は逮捕のチャンスだと張り切った。金の受け渡しの時には、必ず犯人と接触の機会があるはずだ。山下の執念の追跡が始まる・・・・・。


熱狂的なファンから新作を待たれながら、20年以上映画を撮っていない幻の(?)映画監督、長谷川和彦の二作目にして今のところ最新作である。
風間の役はラジオのプロデューサー・浅井。ゼロの番組担当で、ゼロが城戸と一緒に逃亡する様子をラジオで実況中継する為にヘリコプターで追いかけたりもする。もっともヘリのシーンに風間の姿は登場せず、声のみなのが残念なのだが。
グラデーションのでっかいサングラスをかけていて、少々軽薄なマスコミ人種といった感じの役だった。それほど重要な役ではないので出番は多くないが、役柄としては似合っていたと思う。
浅井が最初に登場するシーン。エレベーターから降りてきてゼロと歩きながら番組の打ち合わせをするのだが、「俺、ホントはどこかのセクトがプルトニウム盗んだと思ってるんだ。でもそんなことラジオじゃ言えねえしな」という言う風間が好きだった。でもテレビ放送の時このシーンがカットされていたのはショックだった。ま、その後、ビデオでまた見たからいいんだけどね。
とにかく、とても勢いのある映画である。菅原文太の笑ってしまうぐらい強靭な生命力!醒めた目をした沢田研二のカッコ良さ。公開当時はヒットしなかったと思うが(私はガラガラの映画館で見た)、今でも映画ファンから支持されているのもうなずける作品だ。
ただ、何年か前に久しぶりに見た時に、ジュリーがゼロの番組に電話をかけるシーンが何だかとても古く感じた。物理教師である城戸が若者を装い(?)ゼロと会話をするのだが、その若者口調が、とっても70年代なんである。作品自体が色あせたとは思わないが、風俗描写はこんなにも時代を感じさせるものかと、少し驚いた。
毎年第三作目を期待されながら、とうとう80年代も90年代も映画を撮ることなく終わった長谷川和彦。映画ファンとしては幻の企画「連合赤軍」をぜひ、実現させて欲しいのだが。
そういえば、もう20年近く前だと思うが雑誌のインタビューで風間が「『連合赤軍』が映画化されるならぜひ出たい」と言っていた。風間が「○○に出たい」などとマスコミで発言したのを読んだのは後にも先にもこれだけである。私も風間の出演が実現したら凄い!と思っていたが、出演どころか映画化すら実現しないまま今日に至っている。出たい発言をした時、風間の頭の中には、おそらく連合赤軍の若者を演じる自分の姿があったことだろうと思うが、今なら警察か親の役だろう。
20年というのはそれほどの時間である。
たぶん風間のキャリアの中では小さな役だし重要な仕事ではないかもしれないが、私個人としては、出演しているというだけで、かなり嬉しい作品だ。レンタルビデオで見つけたらぜひ借りて欲しいと思う。

※文中敬称略