四季・奈津子 <東映/幻燈舎>


スタッフ
監督 東 陽一
撮影 川上晧市
ダイアローグ 粕谷日出美 東 陽一
プロデューサー 吉田 達 前田勝弘
原作 五木寛之
音楽 田中未知
美術 綾部郁郎 大野 泰
照明 上村栄喜
録音 久保田幸雄
編集 市原啓子
助監督 栗原剛志
スチール 山田脩ニ
イメージソング「ボスホラスの海へ」
               歌:高橋洋子
1980年9月6日公開
ビデオ発売中(東映ビデオ)


出演
烏丸せつこ 阿木燿子
佳那晃子 景山仁美
太田光子 本田博太郎
風間杜夫 岡田祐介 
火野正平 岡田真澄
牟田悌三 田村隆一
白井佳夫 宮本信子
藤田敏八 藤木敬士
鶴田 忍 長谷川 諭
河合絃司 望月太郎
津山栄一 他

1980年度キネマ旬報
日本映画ベストテン第7位

 


<ストーリー>
九州・博多に住む奈津子は22歳。嫁いだ長女・波留子、東京の大学に通う三女・亜紀子、神経を病んで入院中の四女・布由子の四人姉妹である。
布由子が九州に公演に来ているテント劇団を観に行きたいといいだした。主治医も同行し、奈津子はボタ山での公演に妹を連れて行く。
そのテント公演の帰り、奈津子は写真家の中垣と知り合う。「私のヌード写真を撮って」と中垣に頼む奈津子。中垣は奈津子を東京に誘う。
奈津子には3年越しの恋人・達夫がいたが、達夫からのプロポーズに素直に答えられない。自分の人生には未知の可能性があるような気がする。まだ何も決めたくない、奈津子はそんな気持ちだった。
写真を撮ることを反対する達夫を押し切って、奈津子は東京に向かう。
東京で中垣の知り合い、ケイに出会う。ケイは風のように自由な女性だった。奈津子はケイに衝撃を受ける。
達夫と別れ、仕事もやめ、奈津子は東京で暮らし始める。中垣やケイのような今までの自分とは違う生き方をしている人たちとの出会い、そして生活。奈津子は東京になじんでゆく。
ある日、ホテルのプールで知り合った俳優の紹介で、奈津子は女優のオーディションを受け合格する。
ヨーイ、スタート!のカチンコの音とともに、奈津子の新しい世界が広がってゆく。
OK!の監督の声を聞き、晴れやかな笑顔の奈津子がストップモーションになる。


五木寛之のベストセラー小説「四季・奈津子」の映画化。
四姉妹がそれぞれ公募で選ばれたことや、脚本がなく現場でダイアローグライターが台詞を書くという手法が話題を呼んだ。
風間の役は、奈津子の九州の恋人・金森達夫。奈津子との会話の中から、恋人が離れてゆく淋しさや見守りたい気持ち、それでも押さえられない感情などが伝わってきて、きめの細かいとてもいい演技だった。
特に私はビアホールでの奈津子とのシーンが好きだ。「生きる方角が違ってきたんだよ俺たちは。お前さん思い切って好きなことやってみろよ。俺は遠くで見てるからよ」などの台詞がとても自然で、もしかしたらそれまでに演じたどの役よりも、この映画の風間が地に近いのでは?と思わされた。
達夫というキャラクターも風間杜夫自身もとても魅力的で、出演場面は多くないが(始まってほぼ1時間で出番は終了)、私は風間見たさでロードショーを8回見ている。最後には風間の出番が終わるとさっさと帰っていた。それぐらい、好きな役だった。
作品そのものは、一人の女性が女優になるまでのシンデレラ・ストーリーである。奈津子という22歳のヒロインの冒険物語、といった感じだろうか。
多くの男性に愛され輝いてゆくちょっと生意気な女の子の姿は適度にファッショナブルで、映画のテンポは軽快だが、そのぶん現実感に乏しい。
話が上手く行き過ぎるので、奈津子は悩んだり傷ついたりすることから逃れている。そういうヒロインに感情移入するのは、私には難しい。通俗的な話に自然体の演出で今風(当時としては)の衣を着せたといった印象の映画だった。
北京原人(ウパー!)を経て、アクの強い性格俳優が定着した本田博太郎が二枚目を演じているのが今となっては珍しい。
本田の演じた中垣は根津甚八が、達夫は三浦友和が最初にキャスティングされたらしいが、三浦友和よ断ってくれてありがとう!おかげでこんなに素敵な風間とスクリーンで会えた!という気持ちである。
もっとも私の友人はこの映画の風間は意地悪そうで好きじゃないと言っていたので、見方は人それぞれ違うのだろうが。
風間はこの映画と「夕暮まで」の2本で第二回ヨコハマ映画祭の助演男優賞を受賞している。

※文中敬称略