昼下がりの情事・古都曼陀羅 <日活>
スタッフ 監督 小沼 勝 脚本 中島丈博 撮影 前田米造 音楽 酉水一二三 企画 結城良熙 美術 松井敏行 録音 木村瑛二 照明 川島春雄 編集 井上 治 スチル 井本俊康 助監督 浅田真男 1973年4月4日公開 ビデオ発売中(日活ビデオ)
出演 山科ゆり 風間杜夫 宮下順子 坂本長利 青山美代子 甲斐康二 南 寿美子 影山英俊 堺 美紀子 浜口竜哉
※映画芸術誌選出 1973年度ベストテン第6位
<ストーリー> 京都の銀行に就職して間もない黒木は、上司の勧めで日本画家・幻舟の養女、みな子 と見合いをすることになる。みな子の不思議な魅力にひかれた黒木は、初めてのデー トでみな子から誘われるままに関係を持った。 しかしその関係は幻舟に筒抜けであった。実はみな子の高校時代から、幻舟はみな子 とSM的な関係を結んでいた。見合いの相手との関係を刺激にしてみな子を責めるのである。黒木との関係も今までと同じただの刺激剤のはずだった。 しかしみな子は黒木を本気で好きになってしまう。 黒木には東京に恋人がいたが、自分と恋人関係を続けながら別の男と結婚しようとしている恋人に嫌気がさしていた。みな子の虜になった黒木は結婚を決意する。 しかし幻舟は猛反対。黒木は街で偶然みな子が前に見合いをした相手に会い、悪い話 を聞かされる。そしてその現場をみな子は見てしまう。 数日後、黒木と幻舟とともに京都の山中に出かけるみな子。幻舟を一人残し、どんどん山の奥に入っていく。追いかける黒木。ようやく二人に追いついた幻舟は、そこで抱き合うみな子と黒木を目撃する。幻舟に見せつけるように笑うみな子。無力感に襲われる幻舟だった。 翌日、みな子を訪ねた黒木はみな子が家を出たことを知る。みっともないほどに狼狽する幻舟を残し黒木はその場を去った。 その頃、東京行きの新幹線の中には、鏡をまえに笑顔のみな子がいた。
耽美もののロマンポルノ。一部の日本映画ファンからは傑作と言われている。 脚本・中島丈博、撮影・前田米造と、スタッフは一流。出演者も風間を始め、宮下順子、坂本長利(一人芝居「土佐源氏」が有名。1975年につかこうへい演出「熱海殺人事件」で部長刑事を演じている。風間ファンには「都合のいい女」での宅麻伸の父親役と言えば判るだろう)と、現役率高し。 風間は銀行員・黒木役。ほとんど主役である。年齢設定は幾つか判らないが、とにかく風間が可愛い。高校生、いやショットによっては中学生ぐらいに見える顔もある。 幻舟の愛人役・宮下順子とは本当は同じ年の生まれなのだが、とてもそうは見えない。 たぶん撮影は1973年の1〜2月頃と思われるので、風間は23歳。まだ大学生だった頃の出演作だ。大学生といえば、当時京都の大学生だった映画監督・大森一樹が、 この映画にチョイ役で出演している。デート中の黒木とみな子をからかう若者たちの一人で、台詞はない。赤いセーターを着ているのが大森一樹である。 脚本の中島丈博は幼少期を京都で過ごし、父親は日本画家だったそうだ。子供の頃に なじんだ環境が、映画の世界に影響しているのかもしれないと思うと興味深い。 昭和30年代の文芸映画を思わせるような、しっとりとした風情のある映像。墓場で、 境内で、千本鳥居で繰り広げられるシュールなラブシーン。養父と京都、その二重の呪縛から解き放たれるヒロイン・・・と、見所たっぷりのよく出来たロマンポルノなのだろうとは思う。しかし、その映像美に酔うには物語に対する違和感が邪魔をする し、美的感覚自体が今見ると古臭い。逆に言えばその古さが新鮮だということもあるのだが…。私のように視覚より理屈で映画を見てしまう人間にはわかり難い世界なのかもしれない。ヒロインが下手なのも辛いところである。 飲み屋のシーンでかかる曲が「喝采」と「女のみち」というのが、なんともいえず時代を感じさせる。 それにしても、冬の京都で全裸とは・・・!寒すぎる(^_^;)