私を旅館に連れてって <フジテレビ/共同テレビ>


スタッフ
企画 石原 隆
プロデュース 稲田秀樹
演出 小椋久雄(1.2.4.6.8.10.12話) 
    村上正典(3.5.7.9.11話)
脚本 相沢友子
    太田 愛(5.8話)
音楽 本間勇輔
主題歌 「What would I do」
     福原裕美子(SONIC GROOVE)
放送 2001年4月11日〜6月27日


出演
観月ありさ 矢田亜希子
風間杜夫 浅野ゆう子
金子 賢 梶原 善
江幡高志 円城寺あや
酒井敏也 馬渕英里何
黒川芽以 金田明夫
岸田健作 田村英里子 
菅原禄弥 晴海四方


<サブタイトル>
第一回:「天国から地獄へ」(ゲスト・中井貴一 東 幹久)
第二回:「っていうか大失敗」
第三回:「初めてのおつかい」(近江谷太朗 中丸新将 並樹史朗)
第四回:「きらわれた女将」(ジュディ・オング 二瓶鮫一)
第五回:「最も恐ろしい客」(神山 繁 岩本多代 佐渡 稔 甲本雅裕 谷川清美)
第六回:「料理が出せない」(モロ師岡 大林丈二)
第七回:「母親失格」
第八回:「客は結婚サギ゙師」(鈴木砂羽 半海一晃)
第九回:「恋愛トンマの女」(宇梶剛士 フランク・オコーナー 中根 徹)
第十回:「ダメ女の恋」
第十一回:「閉館」(織本順吉 春田純一 鶴田 忍)
第十二回:「奇跡を呼ぶ宿」(織本順吉 春田純一)


<ストーリー>
働くことが大嫌いな三流モデルの倫子は、美貌を武器にリッチな男性に貢がせて、調子よく毎日を送っていた。
やがてホテルチェーンの社長と玉の輿結婚。社長夫人として贅沢な暮しを満喫する倫子のもとに海外出張中の夫の急死が伝えられる。
実はホテルは莫大な負債を抱えていた。倫子に残されたものは、借金を抱えた古い日本旅館「花壱」と、生意気で反抗的な義理の娘だけ。
さっさと花壱を売り払い、またもとの気楽な生活に戻ろうと考える倫子だったが、亡くなった夫が花壱とその庭に咲く桜の木を深く愛していたことを知る。
旅館が解体される寸前に契約書を破り捨て「私が女将です」と宣言する倫子。
新米女将と落ちこぼれの従業員が、借金を抱えた旅館の再建を、無事に成し遂げることができるのか・・・


<役どころ>
旅館「花壱」の板長・篠田太一役。
もとは赤坂の一流料亭の板前だったが、亡き社長の心意気に惚れ、小さな旅館の板場にやってきた。
チャラチャラしたいまどきの若い娘が大嫌いで、頑固な職人肌の男だが、ドラマの後半、同じ花壱のマネージャー・勅使河原史子との間に恋が芽生えると、純情で可愛い一面も顔をのぞかせる。
男気があって、渋く、頼りになる大人の男性である。


チャラチャラと楽に生きてきたやる気のない女将。落ちこぼれの従業員たち。そんなダメな人間たちでもやれば出来るということを、面白おかしく、ときには感動的に見せてくれるドラマだった。
第一回を見たときは、正直言ってそれほど面白いとは思わなかった。
よくある筋書きによくある描写、リアリティーに欠ける設定も気になった。
しかし、回を重ねるにつれ、レギュラー一人一人のキャラクターが立ってきて、花壱という旅館が輝きだした。
誰一人欠けてもダメだと思わせるほど、登場人物がうまく役にハマり、優れた集団ドラマになっていたと思う。
斬新な描写も、画期的なアイデアもない。毎回予想範囲の中で物語は展開し、平凡と言っていい地点に着地する。
でも、視聴者がこうあって欲しいと思う地点にうまく着地してくれるので、予定調和とわかっていても、見終わったときにホンワカ暖かい気分になれるのがいいところだった。
それはちょうどぬるめの温泉のような、いつまでも入っていられる気持ちの良さとでもいおうか。
よくある旅館再建ドラマのような、いじめやド根性がいっさいないところも気に入った。
旅館という小さな共同体の中で、それぞれがかけがえのない人間としてつながりあう従業員たち。
自分が必要とされているという実感をなかなか持てない今の時代、「あなたの代わりはいない」とはっきり言いきるこのドラマに、元気付けられた人はたくさんいたと思う。
最初は気になったリアリティーのなさも、最後には気にならなくなった。
公式HPに書かれていたが、ハリウッドが旅館ものを撮ったら・・・という視点で作られたそうなので、ハナから現実感など求めていなかったのではないか。
『私を旅館に連れてって』は、疲れた毎日を送る人たちの心を癒す現代のおとぎ話である。強烈に惹かれる内容ではないけれど、人間の善意を信じる眼差しの優しさは、とても心地良いものだった。
「めでたしめでたし」で結ばれるドラマを、きっと本当はみんな見たいのだと思う。
続編(またはスペシャル)を期待したい。

◎このドラマはテレビドラマデータベースの2001年4月期ドラマベストワンに選ばれています。 http://www.tvdrama-db.com/select/ryokann1.htm

※文中敬称略