こんなん見てきました舞台篇1979〜1980
−字が細かくてスミマセン(^_^;)ヒマつぶしにどうぞ−


1979年

「いつも心に太陽を」(劇団つかこうへい事務所) サンケイホール 2300円 5/24
 作・演出:つかこうへい 出演:平田満 風間杜夫 石丸謙二郎 長谷川康夫 高野嗣郎 重松収 他
幼稚園の頃に見た人形劇や小学生の頃に見た吉本新喜劇、高校からむりやり観に行かされたギリシャ悲劇など、それまでにも少しは生の舞台に触れたことはありましたが、自分の意志で観に行ったのは、「いつも心に太陽を」が初めてでした。
当時テレビで犯人役などを演じていた風間さんがちょっと好きでしたし、つかさんの本もよく読んでいました。それに定期購読していた雑誌「バラエティ」に、つか劇団の記事がよく載っていて、一度生で観てみたいと思っていたことから、観に行くことにしました。そうそう一部の女子高校生の間で美少年ブーム(いわゆるボーイズラブもの。ジュネの創刊も確かこの頃)だったことも、理由のひとつかも。バイトしていて、チケット代に困らなかったことも大きいですね。
初めて舞台で観た風間さんは、テレビとはまったく違った演技をしていて、改めてこんなに上手い人だったんだと驚きました。
とにかくこの芝居を観たことからすべてが始まったような気がします。
芝居の翌日から中間試験。興奮して妙にHighになってしまい、結果は散々でした(^_^;)
「初級革命講座・飛龍伝」(劇団つかこうへい事務所) SABホール 当日1900円 10/5
 作・演出:つかこうへい 出演:平田満 加藤健一 井上加奈子
「いつも心に太陽を」(劇団つかこうへい事務所) SABホール 1700円 10/6
 作・演出:つかこうへい 出演:平田満 風間杜夫 石丸謙二郎 長谷川康夫 高野嗣郎 重松収 他
「広島に原爆を落とす日」(劇団つかこうへい事務所) SABホール 1700円 10/7
 作・演出:つかこうへい 出演:風間杜夫 かとうかずこ 加藤健一 平田満 角替和枝 石丸謙二郎 他
以上の三作品が、つかこうへい事務所三大都市(大阪・京都・名古屋)公演で連続上演されました。
初日の「飛龍伝」は急遽決まった追加公演。風間さんが出演しないので迷いましたが結局当日券で観ました。
出演しないと思っていたら、カーテンコールに予告編があり、そこに風間さんが登場。思わぬ展開に大興奮!
その興奮は翌日の「いつも・・・」、最終日の「広島」と、観るたびにヒートアップして、忘れられない3日間になりました。あの膨大なセリフの三作品を日替わりで上演できるなんて凄い!と心から感嘆。
「飛龍伝」は加藤健一=父・熊田 平田満=機動隊・山崎 井上加奈子=嫁のキャスト。十分面白かったのですが、学生運動のことはニュース映像をおぼろげに憶えている程度。このときはあまりピンと来なかったと思います。でも今思えば、この時はまだ70年安保から10年たっていなかったのですよね。団塊の世代の皆さんにとっては、まだ生々しい記憶だったのかもしれないなと思います。
「いつも心に太陽を」は、早くから並んで(自由席でした)左端でしたが最前列で観ました。それまでも好きだったけれど、本当に風間さんにハマったのはこのときだと思います。
すねるモリオ!甘えるモリオ!わがままモリオ!ちょっとおバカなモリオ!泣くモリオ!目の前2メートルほどで繰り広げられる、華麗なる必殺技の数々(笑) 17歳の娘が初めて味わう甘い毒入り菓子でした。
「広島に原爆を落とす日」のデータと感想はこちらを見てください
モリリンとディープ山崎を二日連続で観て、完全に私はKO状態。風間さんに無条件降伏していました。
この公演の2年後、関西に新感線(大阪芸大)、そとばこまち(京大)、第三劇場(同志社)などの劇団が中心となった学生演劇ブームが起こるのですが、この3日間の公演が関西の学生劇団に与えた影響は計り知れないものがあると思います。目からウロコな演劇体験でした。
「広島」を観たあと、友達と夜の11時頃まで喫茶店でしゃべりまくり、帰ったのが11時半すぎ。何も言って行かなかったのでめちゃくちゃ怒られて、その後1週間、外出禁止になったことも、今では懐かしい思い出です。

1980年

「初級革命講座・飛龍伝」(劇団つかこうへい事務所) 立正佼成会普門館ホール 1700円 2/16・17
 作・演出:つかこうへい 出演:平田満 長谷川康夫 井上加奈子 石丸謙二郎
同年12月の公演では「飛龍伝'80」で上演されたと思いますが、この時はまだ以前と同じタイトルでした。
平田満=父・熊田 長谷川康夫=機動隊・山崎 井上加奈子=嫁、のキャスティング。
以前観たときはピンとこなかったのに、この時は面白かった!その後、何度も戯曲を読み、つかさんの作品の中でもかなり好きな芝居になりました。
私を含めて日米安保を知らない世代が増え、前にはなかった用語と時代背景の説明が、最初に加えられていました。用語の説明をするということ自体、ある年齢より上の観客には笑えたのでしょうが、私には真面目にありがたかったです。初日と2日目では、用語の説明部分の台詞がかなり変えられていました。
富田靖子に始まる今の「飛龍伝」の要素は、台詞の中にチラホラ見えているのですが、メインはあくまでも元・革命家と機動隊の舌戦です。男二人の愛憎半ば入り混じったねじれた関係はつか芝居の独壇場でした。シニカルな笑いの中に詩的な情景を織り込むことにかけても、つかさんは天才的だったと思います。
「熱海殺人事件」(劇団つかこうへい事務所) 毎日文化サロン 2000円 4/8
 作・演出:つかこうへい 出演:風間杜夫 平田満 加藤健一 井上加奈子
初めて見た「熱海」 風間さんにとっても初めての木村伝兵衛。どんな部長刑事を演じてくれるのか、興味津々でした。詳しい感想はコチラを見てください
「女シラノ」(状況劇場) 天王寺野外音楽堂 1800円 5/23
 作・演出・出演:唐十郎 出演:李礼仙(李麗仙) 小林薫 清川虹子 十貫寺梅軒 不破万作 他 
つか芝居だけでなく、演劇にもハマり始めた頃。やっぱり紅テントは見ておかなければ!という気持ちでした。
今はなき天王寺の野音に着くと、開演前でしたが塀(?)によじのぼり小林薫が何かまくしたてていました。
こういう演出もあるんだなと、驚きました。客席から歌舞伎のように「唐!」とか「李礼仙!」と声がかかるのにもビックリ。
この舞台の前に映画で小林さんを見ていましたが、やはり舞台では全然違った演技をしていて新鮮でした。
当時のチラシを見ると「日本とサンパウロを繋いだあの保険金殺人事件!ここに、亡き者に告げる醜い鼻の、愛の告白と、遠い国から帰ってきた男の血まみれの首飾りが出来上がる!」と書いてありますが、内容は全然思い出せません(^_^;) ただ「疾風怒濤を夢に見て、血煙あげる騎士は誰」(音楽:小室等)と歌う李礼仙の姿は、鮮烈でした。
「TROUBLE」(ミスター・スリム・カンパニー) 朝日生命ホール 1800円 6/10
 作・演出:深水龍作 出演:深水三章 河西健司 中西良太 中村好夫 堀勉 他
今ではなぜかほとんど語られることはありませんが、1980年前後「東京キッドブラザース」というミュージカル劇団が大ブームでした。もともと寺山修司と活動をともにしていた故・東由多加が主宰の劇団で(最近では東由多加は作家・柳美里の本で有名かもしれません)、この頃は柴田恭平、三浦浩一が看板スター。若者の夢と挫折を描いたミュージカル(観たことないけど)が若い女の子に大人気でした。私はなんだか甘っちょろい気がして苦手だったので、詳しいことは語れませんが、一時代を築いたことは確かです。ブームの最盛期には3千人クラスの劇場で上演していた記憶があります。
その東京キッドブラザース出身の深水龍作が、キッドよりハードなロックミュージカルを目指して結成した(と思われる)劇団がミスター・スリム・カンパニーでした。
皮ジャンとリーゼントに代表される不良ファッションは好きじゃないというのになぜ観に行ったのかといえば、当時、この劇団のリーダーだった深水三章にちょいハマっていたから。でももともと好きなタイプの舞台ではないせいか、スリム熱は長続きはしませんでした。
この作品は『グリース』のような学園モノのロック・ミュージカルだったと思います。
「ニューヨーク・ニューヨーク」(東京ヴォードヴィルショー) 立正佼成会普門館ホール 1900円 7/18
 作・演出:陳玉碎 出演:佐藤B作 魁三太郎 佐渡稔 花王おさむ 坂本あきら 市川勇 他
「朝吉の大冒険」(東京ヴォードヴィルショー) 立正佼成会普門館ホール 1900円 7/20
 作・演出:陳玉碎 出演:佐藤B作 魁三太郎 佐渡稔 花王おさむ 坂本あきら 市川勇 他
この頃はヴォードヴィルショーも大人気でした。吉本のコテコテ笑いで育った私には、つか芝居も含めて東京の笑いは新鮮でした。後に残るものは何にもないけれど(劇団もそれは目指してなかったでしょう)ペーソスに落ち込まない笑いは好きでした。東京乾電池とは違い、ストレートに笑えて親しみやすい劇団で、私は花王おさむがお気に入り。乾電池の綾田俊樹と並んで、小劇場の二大老人役者と勝手に呼んでいました。とにかくおじいさんの演技が上手くて抱腹絶倒。大好きだったな〜。
何年か前にNHKのスタジオ演劇(鐘下辰男脚本)に出演している花王さんを久しぶりに見て、良い役者になられたな〜と私ごときが生意気ですが、嬉しかったです。
「いつも心に太陽を」(劇団つかこうへい事務所) 紀伊国屋ホール 1800円 10/10
 作・演出:つかこうへい 出演:平田満 風間杜夫 石丸謙二郎 長谷川康夫 高野嗣郎 重松収 他
「熱海殺人事件」(劇団つかこうへい事務所) 紀伊国屋ホール 1800円 11/1
 作・演出:つかこうへい 出演:風間杜夫 平田満 加藤健一 井上加奈子
「蒲田行進曲」(劇団つかこうへい事務所) 紀伊国屋ホール 1800円 11/15
 作・演出:つかこうへい 出演:根岸季衣 柄本明 加藤健一 平田満 風間杜夫 石丸謙二郎 他
観客の投票で選ばれた二作品と、新作「蒲田行進曲」の三作品連続公演。つかこうへい三部作公演と銘打っていたと思います。「いつも」は大好きな作品だし、「熱海」もまた観られて嬉しかったけれど、正直言うと私がつか事務所にハマる前に上演された「戦争で死ねなかったお父さんのために」や「出発」が選ばれれば良かったのにな〜と個人的には少し残念でした。
「いつも」はマチネとソワレと両方観て、風間モリリンを堪能。その日のうちに夜行列車に乗って翌朝大阪着。そのまま帰宅せずに風間さんが出演していた映画「野獣死すべし」を観に行ったことを思い出します。
同時上映だった「刑事珍道中」という映画に「森永ホモ牛乳」が出てきただけでやたら笑えました。「いつも」を観てハイになっていたのと、やっぱり疲れていたのでしょう(笑)
二度目に観た「熱海」の風間版伝兵衛は、春よりもかなり余裕が出てきてリラックスして演じているように思えました。週刊文春の林真理子との対談でも話題になった客席でのキスシーンは、大阪公演ではサクラを調達できなかったためか抱きしめるだけだったので、本当にキスしているわブラウスまで引きちぎって上半身ブラだけ状態だわで一瞬ビックリ。
その後、お客さんだと思われたその人が舞台の袖に消えていったのを見て、納得しましたが(^_^;)
加藤健一の犯人役は最初は客席に座っていて、部長刑事の「あそこにいるよ!」のひとことでその席にライトが当たり(ライトを当てるのは部長)、「マイウェイ」を熱唱しながら舞台に登場するのですが、この時私が座っていた席が加藤さんの座る席の真後ろでした。誰か知らないけど芝居の途中から入ってくんなよ〜と思ってたら加藤さんでした(笑) 春の公演のときは加藤さんが座る席よりも前だったので、気付かなかったんです(^_^;) 「いつも」のときもオープニングで平田さんが客席の通路にスタンバイしているのを見て、誰だ通路に仁王立ちになってるのは〜!と、思いっきり勘違いしてしまいました(笑)
根岸とし江と三浦洋一に間に合わなかった〜(T_T)と、遅れてきたつかファンである私はいつも自分の若さを嘆いていました(ちょっと大げさ)。だから「蒲田行進曲」で根岸さんが根岸季衣としてつか芝居に復帰!と聞いたときは嬉しかった〜!伝説の女優に会える!とワクワクしたものです。「蒲田行進曲」は当初、“ビビアン・リーの生涯”というサブ・タイトルがついていたので、根岸さんが季衣と改名したのはてっきりビビアン・リーにちなんだものだと思っていました。季衣って<リイ>とも読めません?(よく考えたら読めないか・・・)
でも、最近根岸季衣さんご本人のサイトで聞いてみたところ、まったく関係ないことが判明。20年間の思い込みが一瞬で崩壊(笑) それにしても直接ご本人にお聞きできるなんて、凄い時代になったものです。
柄本明が出演するとは実際に観るまでまったく知りませんでした。初めて柄本さんが舞台に登場したとき「あれ?柄本さん?今の柄本さん?」と、上演中にも関らず友達と確認しあってしまいました(^_^;) 
最初に観た柄本・ヤス、加藤・銀ちゃんのインパクトは凄いものがありました。身を切るような痛さと切なさで、観ているうちにつらーくなってしまい、凄い芝居だなあと思いながらも、最後まで手放しで好きだ!と言える舞台ではなかったです。初めて観る根岸・小夏は、陽性で可愛いくて、テレビとは違う素に近い(ように見えた)キャラクターがとても魅力的でした。
今思えば、それまで照れて斜に構えていたつかこうへいが、正面を見据えて愛や憎しみなどを描いた最初の作品だったのでは?と思います。そのぶん重く泥臭くなっていますが、人間の本質は泥臭いものですよね。以前からつか作品の底に流れてはいたけれど見えにくかった要素がより鮮明になっていて、観る者の内面に斬り込んでくるようなところがありました。私はそこに拒否反応もあったし、忘れられない強烈な印象を受けたのも確かです。ヤスと銀四郎の関係は、過激に依存しあう一種の甘えで、小夏はそんな二人のねじれた愛憎を斬って捨てている・・・「銀ちゃんが、逝く」を経た今はそんな風に感じるのですが、当時は複雑な人間の感情など理解できず(今も苦手ですが)、ただただあのSM的な関係が辛くて見ていられなかったです。
「蒲田」の詳しいデータはココにも書いてあります
初めてのボーナスは、この三部作公演を観に行ったことで、ほとんど消えてしまいました。
「明日は今日よりも」(劇団未来) 郵便貯金ホール 1600円 11/22
 作:和田澄子 演出:森本影文 出演:小原三津彦 植木吉弘 金沢百合子 他
大阪の新劇。当時友達がこの劇団の研究生で、出演するというので観に行きました。
昭和30年代を舞台に労働問題を扱った芝居だったと思います。友達は二言ほど台詞がありましたが、この舞台のあと、すぐに辞めてしまいました。
「蒲田行進曲」(劇団つかこうへい事務所) 毎日ホール 2200円 12/12・13
 作・演出:つかこうへい 出演:根岸季衣 柄本明 平田満 石丸謙二郎 長谷川康夫 他
関西でもつか劇団はブームになっていました。でも当時はまだ大阪には手ごろな劇場が少なく、この芝居が上演された毎日ホールはキャパ1500人クラスの会場。紀伊国屋の約三倍の広さです。それでもチケットを取るのには大変苦労しました。当時プレイガイドジャーナル(プガジャ)という情報誌を出版していた会社のプロデュースで大阪公演は行なわれていました(余談ですがその頃のプロデューサーは、今、近鉄劇場の支配人(?)である松原さんだったと思います)。チケットはそのプガジャの電話予約だけでの発売ではなかったかと記憶していますが、即日完売でした。当時は東京の劇団が長期間大阪で公演を打つということはなく、この「蒲田」もたった2日間。それを考えると毎日ホールでも仕方がないと思うものの、小劇場に比べると緊張感が薄まるし、さすがつか事務所の俳優さんたちはマイクがなくても、きちんと客席に台詞が届くだけの声量はありましたが、それでも広い舞台で演じられた「蒲田」は、紀伊国屋ほど濃密な空気は感じられませんでした。
チラシにもポスターにも「出演・風間杜夫」と刷ってあったのに、ライバルスター役の風間さんは来ず、石丸さんか長谷川さん(はっきり憶えてなくてすみませんm(__)m)が代役を務めていました。風間さんの欠席は台詞の中で語られるというのが、つか事務所らしいなと思いました。その台詞とは・・・
加藤「風間どうした?」
平田「来ない」
加藤「なんで?」
平田「チョイ役イヤだって大阪来ない」
加藤「まったくよ〜なんでそんな自分勝手なんだろうね。芝居はワでしょ?ワをくずすようなことしたらアカン」
という感じだったと思いますが、正確なところは忘れてしまいました。

※文中敬称略